社長、社内恋愛は禁止のはずですが
ミーティングルームでのシミュレーションは、まるで本番さながらだった。

直哉さんは一切の妥協を許さず、厳しくも的確な指導を繰り返す。

「水城、資料を読むな。相手の目を見ろ。内容は、すでに君の頭に入っているはずだ。」

プレゼンの要所ごとに止められ、何度も同じ箇所をやり直す。

私は必死に声を張り上げるけれど、緊張するとつい手元の資料を追ってしまう。

「そこは、身振り手振りを加えた方が説得力が増す。」

直哉さんは椅子から立ち上がり、自らの体で実演してみせる。

堂々とした姿勢と滑らかな口調に、思わず見とれてしまった。

こんなふうにできたら、相手を惹き込めるのに。

何度も失敗を繰り返すうちに、背中に冷や汗が流れる。

シミュレーションが終わった時には、もう立っているだけで精一杯だった。

「はーあ……」
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