社長、社内恋愛は禁止のはずですが
小さくため息をついてデスクに戻ると、肩の力が抜けて椅子に沈み込んだ。

資料を手にしたまま呆然とする私を、同僚たちがぽかんと見つめている。

あまりの練習量と社長の徹底ぶりに、皆も圧倒されているのだろう。

「なに、社長って仕事になると彼女にも厳しいの?」

「ええ?そんな彼氏嫌だ。」

私は思わずちらっとその方向を見る。

加藤さんと佐沼さんだ。

「水城さん、頑張ってください。」

励ますしかない彼女達の気持ちも分からないでもない。

でも対照的だったのは弥生だった。

「彼女だからって、甘やかして貰えると思ったの?」

「別に。」

私は椅子をくるりと一回転させ、弥生の方を正面から見据えた。

彼女は腕を組み、じっとこちらを見ている。

加藤さんや佐沼さんの「そんな彼氏嫌だ」という声がまだ耳に残っていたけれど、弥生の言葉はそれとは違う。
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