社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「誰にでも、ああなんです。期待しない方がいいですよ。」

胸がきゅっと痛み、私は唇を噛みしめる。

「……知ってます。私が特別じゃないことくらい。」

なんとか答え、企画書を受け取ろうと手を伸ばした。

だが、その手を岸本さんがすっと阻んだ。

「そういうのが、イラつくんですよね。」

冷ややかな目で射抜かれ、思わず息をのむ。

「何でそんなに余裕なんですか?」

「……別に、余裕ってことはないけど。」

正直に答えただけなのに、それがまた彼女の苛立ちを煽ったようだった。

岸本さんはさらに一歩近づき、低い声で言い放つ。

「言っておきますけど、社長は社内恋愛なんてしない人ですよ。」

その言葉が鋭く突き刺さる。わかっている、そんなこと。わかっているのに……

胸の奥に灯ってしまった想いは、どうしても消せなかった。

そして数日後。社内の掲示板に、再び違反者の名前が貼り出された。

――榎本君。
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