社長、社内恋愛は禁止のはずですが
同期の名前を目にした瞬間、心臓がきゅっと縮む。

仲間の名が掲示されるのは、さすがに堪えた。

「ほら、榎本さん。新入社員の女の子と遊んでいたから。」

誰かがヒソヒソと声を潜める。

ざわつく社内。私は頭の片隅に、あのときの社長の言葉を思い出していた。

『正当な恋愛なら、見て見ぬ振りをする』

あの言葉の主が、こうして罰を下したということは――榎本君はただの遊びだったのだろう。

冷徹に見えるけれど、高峰社長は正しいものとそうでないものを峻別する人。

だからこそ、余計に苦しかった。

私に向けてくれた微笑みは、どちらだったのだろう。正当な恋愛? それとも……。

そんな迷いが胸に広がったとき、ふいに影が差す。

「また違反者、出ましたね。」

振り返ると、岸本さんが立っていた。

いつも通りの完璧な笑顔。

しかしその奥に、冷たい光が宿っている気がした。
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