社長、社内恋愛は禁止のはずですが
両親、会社のごく親しい仲間、そして長く支えてくれた友人たち。

派手さはなくとも、温もりがあった。

「娘をお願いします。」父の言葉とともに、私は直哉さんの手に委ねられる。

温かく、力強い手。握られるだけで、全身が安心に包まれる。

牧師が静かに誓いの言葉を読み上げる。永遠の愛を誓いますか、と。

「はい。」

直哉さんの迷いのない声。

「はい。」

震えながらも、確かな声で答えた自分。

そして―――唇が重なった。

拍手と祝福の声がチャペルに広がり、花びらが舞い落ちてくる。

披露宴は、ホテルの小さなバンケットルームで行われた。

窓から見える庭には白いバラが咲き誇り、清々しい空気を運んでくる。

「乾杯!」

直哉さんがグラスを掲げ、場が一気に華やぐ。

私たちを祝福する笑顔に囲まれ、胸がいっぱいになった。
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