社長、社内恋愛は禁止のはずですが
あんなに「社内恋愛禁止なんて時代遅れ」って笑っていた彼女が、まさか社則違反の当事者になるなんて。

胸の奥がざわつく。

この規則は、誰にとっても現実に重くのしかかるものなのだと、初めて実感した。

「あーあ。謹慎だって。もう給料減給だわ。」

弥生はまるで他人事のように明るく笑っている。

けれど私には、その笑顔がどこか虚勢にしか見えなかった。

「でも……どうしてバレたの? 誰かがそんな情報を流したの?」

社内恋愛禁止なんて、表向きの掟にすぎない。

通報でもされない限り、隠そうと思えば隠し通せるはずだ。私は首を傾げる。

弥生は一瞬だけ視線を背後に送ると、耳元に顔を寄せてきた。

「……岸本美玲。」

その名を囁いた瞬間、背筋にひやりとしたものが走る。

「美玲さんが……?」

思わず問い返す。

「そうよ。あの子、社長の犬みたいな奴だから。」
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