社長、社内恋愛は禁止のはずですが
弥生は苦笑しながら吐き捨てた。

岸本美玲。社内でも人気ナンバーワンの美貌を誇り、誰にでも愛想よく振る舞う才媛。

華やかで堂々としていて、男女ともに憧れる存在。

けれどその裏で、こんなふうに人を陥れることも平気でやってのけるのだろうか。

もし本当にそうなら――社長に忠誠を誓い、誰よりも近くで彼を支えているのは、美玲ということになる。

胸の奥がざわめいた。

私の想いは、禁止令だけでなく、彼女の存在によっても試されているのかもしれない。

その日の夕方。帰りのエレベーターに乗り込んだとき、タイミング悪く――いや、もしかしたら幸運なのか――社長と一緒になった。

「お疲れ様です。」

「お疲れ、水城。」

低く落ち着いた声。部長たちよりも気さくで、意外とよく社員に話しかけてくれる。

だから私にとって社長は、何でも頼れる上司という印象だった。……恋をしてしまう前までは。
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