社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「なんだ、まだ残っていたのか。」

低く落ち着いた声。

高峰社長だった。

静寂を破るように現れたその姿に、胸がドキンと鳴る。

この広いオフィスで、今は私と社長、二人きり。

――やばい。鼓動がうるさくて、資料の文字すら追えなくなる。

「すみません! 今、帰ります。」

慌ててファイルを保存し、PCをシャットダウンする。

「お疲れさまでした。」

カバンと上着を掴んで足早に立ち上がると、不意に肩を叩かれた。

「送って行くよ。」

「えっ……」

高峰社長はそれ以上何も言わず、当然のように私の先を歩く。

――今、なんて? 家まで送るってこと……?

胸がいっぱいになって、壊れそう。

「あ、あの……」

「いいから。」

短く言い切ると、社長はエレベーターのボタンを押した。
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