社長、社内恋愛は禁止のはずですが
オフィスの静けさが嘘のように、二人きりの空間に乗り込む。

沈黙のまま地下駐車場に到着すると、そこに待っていたのは――。

「乗って。」

差し出された言葉に、思わず息をのむ。

一目で分かる、高級車。

黒光りするボディに、社長の存在感が重なる。

こんな非日常が、私の目の前に広がっているなんて。

「失礼します。」

そう言って助手席に乗り込むと、シートはまるで高級ホテルの椅子のように身体を包み込んだ。

――ダメだ。疲れのせいでまぶたが重い。

気づけば、うとうとと眠りに落ちていた。

どれくらい時間が経ったのだろう。

ふと目を覚ますと、車は静かに停車していた。

窓の外には、街灯に照らされた海岸線。闇の中で白い波が寄せては返す。

「えっ……」

慌てて隣を見ると、高峰社長は腕を組み、静かに窓の外を眺めていた。
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