社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「何もしないから。」

真っ直ぐに向けられる瞳は、驚くほど優しい。

「……はい。」

小さく答えると、車は再び走り出した。

ほどなくして辿り着いたのは、海岸線に佇む白亜の建物。

「ここが、俺の別荘だ。」

社長の言葉に、ただ圧倒される。

「何もないから……デリバリー呼ぶか。」

気さくに笑いながらスマホを取り出す姿に、肩の力が抜けていく。

――やっぱりこの人は、仕事も私生活も真っ直ぐなんだ。

不思議と安心しながら、私は別荘の玄関を踏み入れた。

別荘のリビングにあるソファーに腰を下ろすと、ほどなくしてデリバリーが届いた。

ピザとサラダ、そしてワインがテーブルに並ぶ。

「お疲れさま。」

グラスを差し出した高峰社長は、シャツ一枚というラフな姿。

いつものスーツ姿とは違い、その柔らかな雰囲気に思わず胸がざわついた。
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