社長、社内恋愛は禁止のはずですが
深々と頭を下げると、社長の視線が温かく見守っているのを感じた。

そのまま車が走り去っていくまで、私はしばらく玄関先に立ち尽くしていた。

夢のような時間だった。

――もしかしたら社長は、ただ単に疲れている私を気遣ってくれただけなのかもしれない。

そう考えると、胸が少しだけ痛む。
でも。

「一緒の時間を過ごしたい。」

そう言ってくれた言葉は、私だけに向けられたもの。

あの瞬間、社長の瞳に映っていたのは間違いなく私だった。

もし、またチャンスがあるなら。

その時は伝えたい。この胸の奥にずっと秘めてきた想いを。

部屋のドアを閉め、ベッドに身を投げ出す。

シーツの冷たさに触れながら、ふわりと笑みがこぼれた。

――今まで味わったことのない、不思議な幸福感。
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