社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「そういうことだったのか。」

低い声に振り向くと――デスクの下に隠れていた高峰社長が姿を現した。

顎に手を添えながら、何かを考え込むように。

私は慌てて立ち上がる。

「……情けないです。あんなふうに思われていたなんて。」

絞り出す声は震えていた。

社長も立ち上がり、真っ直ぐに私を見つめる。

「気にするな。昇進したての頃は、皆そうなんだ。」

そう言って、ふわりと大きな手が頭に置かれる。

温もりに胸が熱くなり、思わず涙がにじんだ。

「……これは何としてでも、実績を出さないと。」

「……はいっ。」

心の底から応えた。社長が味方でいてくれる――それだけでどれほど救われることか。

「仕事も終わっただろう。家まで送っていくよ。」

差し出された優しさに、私は小さく首を横に振った。
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