社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「ありがとうございます。」

きっと社長は、落ち込んでいた私を励まそうとしてくれているのだろう。

「いいんだ。誰だって、あんなこと言われたら落ち込む。」

穏やかな声と共に、社長の大きな手がそっと私の手を包む。

「……俺もあるんだ。ちょうど課長になった時だった。」

「えっ……」

思わず顔を上げる。社長にも、私と同じ経験が?

「周りよりも早い出世だった。頑張った甲斐があったって、正直嬉しかった。けど――周りは“御曹司だから”って、俺の支持を無視した」

夜空を見上げる社長の横顔は、どこか寂しげだった。

その姿に胸が締めつけられる。

「社長……」

言葉にならず、ただ私は彼の手をぎゅっと握り返した。

その一瞬、彼の視線がこちらに戻る。
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