社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「うちの娘も独身でね、直哉君にぴったりだと思うんだ。」

まるで契約のように自分の娘を差し出してくる人。

極めつけは――

「直哉さん、私、独身です!」

本人が堂々と売り込んでくる令嬢まで現れた。

どれも、相手が相手だけに即座に断るわけにはいかない。

社交界というのは、そう簡単に「興味ありません」と突っぱねられる世界ではないのだ。

「……考えておきます。」

結局、高峰社長が出した答えはそれだけ。

――そうだよね。

どれだけ優しい彼でも、相手が業界のお偉い方なら、そう言うしかない。

胸の奥がずしんと重くなった。

彼の隣に立っている自分が、ますます場違いな存在に思えて仕方がなかった。

それでも、高峰社長と業界の重鎮たちとの挨拶周りは続いていた。

どの人も一目置かれるような人物ばかりで、私はただ後ろに控えることしかできない。
< 92 / 273 >

この作品をシェア

pagetop