社長、社内恋愛は禁止のはずですが
私はワイングラスを強く握った。

胸の奥に広がるのは、不安と――そして、抑えきれない嫉妬。

「それも縁だと思うのだよ。どうだね、みどりは。」

父親がそう問いかけると、みどりさんはほんのりと頬を染め、恥じらうように目を伏せた。

「ははは。娘も気に入ったと見える。」

……娘“も”? いやいや、ちょっと待って。

高峰社長は「美しいお嬢さんですね」と言っただけじゃない!

それがまさか“気に入った”に変換されてしまうなんて。

――ああ、やっぱり私なんかじゃ着いていけない。

御曹司の世界。社交界。立場も家柄も、何もかもが違いすぎる。

「どうだね。みどりと話してみては。」

父親が促すと、みどりさんも嬉しそうに一歩前に出た。

その横顔は、自信と余裕に満ちていて、私には到底持ち得ないものだった。
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