社長、社内恋愛は禁止のはずですが
ざわめきが広がる会場。息が詰まるような緊張の中、社長の低い声が響いた。

「すみません。お嬢さんとは婚約できません。」

重々しい沈黙。

でも私は、その腕に掴まれているだけで胸が熱くなった。

――御曹司の世界なんて、関係ない。この人は、私を選んでくれたのだから。

「まあ、いい。今日のところは。」

短く吐き捨てるように言い残し、みどりさんのお父さんは娘を連れて去っていった。

「……怒らせてしまいましたね。」

思わず小声でつぶやくと、直哉は肩をすくめる。

「いいんだ。見たところ、まだ俺を諦めてなさそうだから。」

その落ち着いた口調に、思わず二人ではははと笑ってしまった。

さっきまでの緊張が嘘のように、心が少し軽くなる。
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