社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「なあ、遥香。」

「はい。」

「バルコニーでも行って、外の空気吸おうか。」

その提案が嬉しくて、私はにっこり微笑んだ。

彼に手を引かれ、重厚なカーテンの奥にあるバルコニーへ出る。

夜風が頬を撫で、頑張って張り詰めていた心をほどいていく。

そして目の前に広がったのは、宝石を散りばめたような夜景。

「……綺麗。」

思わず呟くと、横に立つ直哉の横顔も、夜景に負けないくらい輝いて見えた。

「今日は、嫌な思いをさせてごめん。」

夜景を見つめたまま、直哉がぽつりと呟く。

「いいえ。大丈夫です。大変なのは社長の方ですし。」

私なんかより、社長の方がずっと気苦労が多いはず。

パーティーのたびに、今日みたいに縁談を持ち込まれるのだろうか。そう思うと胸がちくりと痛んだ。
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