社長、社内恋愛は禁止のはずですが
――地味。

確かに私は派手ではないし、ブランド物で着飾ることもない。

けれど、わざわざ口にされると胸が締め付けられる。

「よくも直哉さんの隣にいられるわよね。」

「遊ばれているのが分からないのかしら。」

酷い。そんなことまで……。

ぐっと拳を握りしめ、夜景を見上げる。

涙が零れそうになり、必死にこらえた。

――私は本当に、社長に相応しくないのかもしれない。

あの華やかな女性たちの方が、ずっと直哉の隣にふさわしいのかもしれない。

夜風は冷たいのに、心だけが熱く、痛い。

その時、背中にそっと温もりが重なった。

振り返らなくても分かる。

高峰社長の腕が、私を優しく包んでいた。

「気にするな。」

背中から聞こえた低い声に、私は小さく首を振った。

「でも……」

その瞬間、高峰社長はすっとカーテンを開け放った。

煌びやかな会場から差し込む光の中で、彼の声が鋭く響く。
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