本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 「うん! パパ、……ママ、ありがとう!」


 ラジコンの箱を胸に抱えて飛び跳ねながら、望は不意にママと呼んだ。


 「……え? 今……」


 莉乃の胸が音を立てて波打つ。


 「……ママ、ありがとう」


 たったそれだけの言葉が、こんなにも心を揺さぶるとは思っていなかった。今までずっと〝莉乃〟と名前で呼んでいた望が、初めて〝ママ〟と――。
 望の口から零れた『ママ』は、今夜の初雪のようにやわらかく、あたたかく莉乃の心に降り積もっていく。


 「うれしい……」


 思わず漏れた声に、隣に立つ青葉がちらりと莉乃を見る。その優しい眼差しに気づき、微笑みで返した。

 その喜びは、頑張って練習した料理の手ごたえでも、部屋を飾りつけた達成感でもなく、望の心に自分がそっと根を張りはじめていた証。

 莉乃はそっと望の頬に手を伸ばして触れる。三人で微笑み合った瞬間、家族としての絆がさらに深まった気がした。

 その日のディナーは、まるでクリスマスの魔法にかけられたようにあたたかく賑やかで、心が満たされるひとときとなった。
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