本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
機械部品メーカーの社長を務める父は昔気質で気難しく、〝女の幸せは家庭を持つことでこそ輝くもの〟という古臭い考えを持っている。そんなわけで、莉乃には社会に出ず結婚してほしいと常々願っていた。
そのくせ当の本人は家庭を顧みずに仕事ひと筋。子どもの世話や家庭のことは妻に任せきりという矛盾を見せられてきたため、莉乃の心の奥で反発する感情が沸き上がるのも無理はないだろう。
母がひとりで家庭を支え、ときには涙を見せる姿を知る莉乃にとって、父の言う〝女の幸せ〟の定義はなにか違うように思えた。
価値観はそれぞれであり、父のそれも否定するつもりはない。しかし自分の人生をほかの人に決められることには強い違和感を覚えていた。
結婚という選択肢に魅力を感じることができず、大学三年生のとき、自分の未来を切り拓くために自然派化粧品の会社を設立。その発端は、幼い頃に母が作っていた手作り石鹸の記憶だ。それは莉乃にとって自然の力とあたたかみを感じる特別な体験であり、心の中に鮮明に刻まれていたのだ。
そんな貴重な体験をさせてくれた母は、莉乃が高校生のときに病気で他界している。
『お父さんをあまり責めないであげてね。不器用な人なのよ』
病床で母はよくそう言っていたが、莉乃は一度も同意できなかった。
そのくせ当の本人は家庭を顧みずに仕事ひと筋。子どもの世話や家庭のことは妻に任せきりという矛盾を見せられてきたため、莉乃の心の奥で反発する感情が沸き上がるのも無理はないだろう。
母がひとりで家庭を支え、ときには涙を見せる姿を知る莉乃にとって、父の言う〝女の幸せ〟の定義はなにか違うように思えた。
価値観はそれぞれであり、父のそれも否定するつもりはない。しかし自分の人生をほかの人に決められることには強い違和感を覚えていた。
結婚という選択肢に魅力を感じることができず、大学三年生のとき、自分の未来を切り拓くために自然派化粧品の会社を設立。その発端は、幼い頃に母が作っていた手作り石鹸の記憶だ。それは莉乃にとって自然の力とあたたかみを感じる特別な体験であり、心の中に鮮明に刻まれていたのだ。
そんな貴重な体験をさせてくれた母は、莉乃が高校生のときに病気で他界している。
『お父さんをあまり責めないであげてね。不器用な人なのよ』
病床で母はよくそう言っていたが、莉乃は一度も同意できなかった。