船瀬さんの彼女、村井さん。

翌朝7時30分




「おはようございます」




電気もついていない、まだ誰もいないオフィスに挨拶をした。


朝ごはんを食べる気にもならず、冷蔵庫で冷やしておいた麦茶をコップに注いで一気飲み。冷たさで頭を冷やして気合いを入れてから出社した。



無事に押谷に戻れたことだし、プロジェクトもどんどん進めていきたい。とにかく仕事に集中して、昨日のことは思い出として残すか、記憶から抹消するか、また後で決めよう。




「押谷さん、早いね」


「部長、おはようございます。プロジェクトのことで良い案が浮かんだので、忘れないうちにパソコンに覚えておいてもらおうと思って」


「そうだな。頭の中だけじゃ、いつか忘れるからな」




私の昨日の記憶も、いつか忘れる。好きだった船瀬さんと一日過ごせたこと、村井さんの体に乗り移ったこと。


案外辛かったことはよく覚えているけど、いつか曖昧になって普段の穏やかな生活に戻れる。


きっと上手くいく。深呼吸を一つして、部長に覇気のある返事をした。


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