内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
 至極真っ当な主張だが閉口してしまう。コンプライアンス遵守は大前提として異論はない。とはいえ会社が傾きかけている今こそ、わたし達は協力すべきなのに。

「耳障りのいい理想と正義を掲げるだけなら楽ですよ〜」
 会田君が会話に入ってくる。彼は今回のコンペの中心的なメンバーで不快感を示す。ひょうひょうと人を煙に巻く雰囲気も押し殺せず、歳相応の眉間のシワを見せ付けた。
(本人が君付けを希望するから呼ぶのだけれど、実年齢は会田君が上なんだよね)

「はぁ、残念ながら皆さんが思うほど楽ではありません」
「そういう物の言い方が要らぬ誤解を生むんです」
「誤解でなく事実で、胃薬が手放せないライフワークですから」

 手帳を出した反対からピルケースをチラつかせる。

「それはそれは。どうぞお大事になさって下さい」
 会田君を挑発し続けたら例の話をこの場で暴露されかねない。それは避けたい。
 指摘事項の改善を受け入れを自分側へ書類を引き寄せる事で表した。

「松村課長〜いいんですか?」
「……いい。こんなやりとりするだけ時間の無駄だし」
「そうですか。じゃ、消防訓練お疲れ様です〜」
 監査室との対立を回避した選択に会田君は興味を無くすーーと思いきや、にっこり微笑み付け加える。

「そんなんだからモテないんですよ〜」
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