内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です


 恋愛が全てではない、そんな室長の言葉は翌朝まで胸の奥に引っ掛かっていた。
 ◯◯が全てではないというのは体(てい)の良い慰めや言い訳。現に占いの項目で恋愛運は欠かせない。
『蟹座の本日の運勢は〜』
 朝食を片手に流し見していたテレビへ意識を向ける。
『意外な人と大接近!? もしかして運命のお相手かもしれません』
 聞いた途端、コーンフレークがジャリッと割れた。

 積極的に占いを信じているという訳じゃないが、アドバイス程度で心へ留める習慣がある。これは恋人ーー今は元と表記がつく同居人のルーティンが移ったんだ。

「苦っ」
 マグカップをひとくち含み、ミルクを足しに冷蔵庫へ向かう。その際、コーヒーメーカーを睨む。
 元彼は新しい恋を見つけるなり引っ越していき、わたしに残されたのはこのコーヒーメーカーと後悔だけ。
 あの時、会田君の暴露を避けたのは自分も傷付きたくなかったからかも知れない。営業部課長代理という立場はもちろん、松村まひる個人としても。

 皮肉ではなく、恋愛が全てではないとのマインドが榊原室長の慰めや言い訳となればいい。まぁ一番良いのは会田君の話が勘違いである事だけれど。
(会田君は不思議と他人のスキャンダルに縁があるんだよな。あ、そういえば課長の時だってーー)
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