内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
 ここでハッとし、時刻を確かめる。

「今日は消防訓練があるから早く出社しないと」
 改めて声に出せばゲンナリするが、やらない訳にもいかない。通勤鞄とジャケットを抱えて玄関の姿見へ自分を映す。
(よし、頑張るぞ)
 7センチヒールを履いて気合を入れる。 



「あら?」
 一番と思いきや、営業事務所には既に部員の姿が見受けられた。彼等はわたしと同じく疲れが抜けきらない表情をしつつも手を動かす。
「おはようございます。あんな風に言われたら悔しいじゃないですか」
 そして、尋ねなくても挨拶と出勤理由を寄越した。あんな風にとは言わずもがなーー榊原室長だ。

 花形と評される営業部だが、ここへ配属された者は厳しいノルマを課せられる為、野心と向上心がないと務まらない。

 わたしの場合、お飾りの課長代理になりたくないし、単なる女性の社会進出実績とされるのも勘弁という気持ちを強く持つ。
(結果的に室長の嫌味が部員のやる気を焚き付けた。まさかこれも計算のうち?)
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