内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
 それは大した自信だと肩を竦めて見せ、やはり景気付けに一杯頼むべきだったかも。
「就業後は眼鏡を外されるんですね」
(見慣れない、むしろ初めて見た。素顔の室長ってーー)
「意外と優しい顔をしてるでしょう? 見くびれない為、眼鏡を掛けてます」
「へぇ、伊達なんですか!」

 眼鏡の有無で印象が劇的に変化する訳じゃないが、装飾品でオンオフを切り替える部分は共感する。

「私の伊達メガネは松村課長のヒールと同じ理由でしょう。あぁ、そうだ。最初の共通点の発見に乾杯しませんか?」
「室長は車では?」
「この私が飲酒運転などするとでも?」
「しませんね」
「良いワインがあると言われまして。一人で開けるのも淋しいので」

 言った側からグラスが二人分提供された。ソムリエによる説明を聞くうち、ヴィンテージワインであるのを理解。
 そして、グラスを傾けて香りを楽しむ室長へ問いかけてみる。

「こんな高価なワイン……今日が誕生日ではないですよね?」
「そうですが?」
「そうですがって……」
「誕生日を喜ぶ歳でもないですし」
「いやいや、そういう意味じゃなく」

 室長は誕生日ディナーをする目的でこの店を予約していたのだ。

「記念日をわたしなんかと過ごさなくたって」
 わたしが置かれた状況は恋人からするとプロポーズを期待してもおかしくないシュチュエーション。残業の連絡を受け、どれほどがっかりしただろう? 怒りに任せ約束をキャンセルする女心は察して余る。
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