内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
「お節介ですが、キャンセルされた方ともう一度話される事をお勧めします」
「……それこそ、どういう意味ですか?」
 ワインを一口含み、酸いも甘いも噛み分けてきた口内で芳醇な味わいを楽しむ。席を立ちかねないわたしにも飲むよう促す。

「お相手の気分を損ねるんじゃないかと言っているんですよ!」
「彼女にそのような権利はありません」
 室長は冷静に言い切った。
「松村課長はそれをご存知なのでは?」
 肯定も否定もしずらく、黙るしかない。
(恋人の心変わりに気付いてるの?)
 室長の胸の内はいまいち掴めず、ポーカーフェイスが崩れる様子もない。

「誕生日の夜、一人で食事をする男を可哀想に思って付き合って頂けませんか?」
 暫しの沈黙後、話の切り口を変えてくる。
「ま、まぁ、それなら。せっかくの料理やお酒を無駄にするのは勿体無いですし。可哀想だからじゃないですよ」
 同情した訳ではないのをしっかり伝え、わたしもワインへ口を付けた。

「……優しいですね」
「お世辞は結構です、わたしが男勝りなのを知ってるくせに」
 室長はわたしを恋愛対象としない、だから食事へ誘えた。ここに関して別段思う事はない。

「どうせ飲むなら楽しく飲みたいので、ここは男同士だと思って乾杯しましょう!」
 お酒の席は盛り上げてこそ、営業部員の気質が出る。室長を接待するつもりで振る舞おう。
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