内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
 チンッ、わたしと室長のグラスが合わさる。

「今日が誕生日ーー室長はさそり座ですね」
「占いに詳しいのですか?」
「詳しいという程ではないんですが、こう見えて星座占いやタロット占いを見たりするのが好きなんですよ」
 これが業務の延長上の食事と割り切れば、気持ちを切り替えるのは難しくない。監査室の室長相手をもてなしたところでリターンは望めないものの、恋人に浮気をされるやもしれない彼と自分を重ねなくて済む。
(ーーあぁ、でも駄目だ。どうしたってチラついてしまう)
 室長は彼女に気分を損ねる権利は無いと言い、その理由をわたしが把握しているとも言った。
(それって、やっぱり)

「松村課長?」
 いつの間にかグラスを飲み干しており、おかわりを勧める声で我に返る。
「あ、えっと、すいません、何のお話でしたっけ?」
「松村課長は占いをよくご覧になると」
「あぁ、そうでした! わたし、意外と乙女です」

 室長から注いで貰うのを大袈裟なジェスチャーで畏まり、二杯目をさっそく流し込む。
 アルコールに強いと自負する。室長の恋人の件を思考から切り離す為、お酒の力を借りようか。

「あまり飲みすぎないで下さいね」
「お高いワインなのに、すいません! 美味しくてつい」
「値段は関係ないですよ。ただ、私が悪酔いさせたと言われると困るので」
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