凪がくれた勇気
<翌日、市立図書館>

歩侑(ふう)
(また彼に逢えないかな?昨日のお礼も伝えたいし…。)

この日、私は初めて
現実逃避以外の目的で図書館を訪れた。

それも、可能性がほとんどないことに期待して。

歩侑(ふう)
(私、何してるんだろ…?)
(彼がこの街の人かどうかもわからないのに。)
(もし代表選手なら忙しくてそれどころじゃ…。)

そんなことを思いながら、
昨日彼と出逢ったスポーツ関連本のコーナーに行くと、

歩侑(ふう)
(…ウソ?…彼…いた!)

ドクン、ドクン…

にわかに騒がしくなる鼓動を感じながら、
私は彼に会釈した。

ペコリ

彼も私に気づいて会釈を返してくれた。

歩侑(ふう)
(そうだ!お礼を伝えなきゃ…!)

私は常備のメモ帳を取り出し、
「昨日はありがとうございました」と書いて彼に見せた。

すると彼は昨日と同じく右手を左右に2回振った。
やはり言葉はなかった。

歩侑(ふう)
「??」
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