凪がくれた勇気
清凪(せな)くんの眩しさや勤勉さに触れるほど
私の自己嫌悪が深まっていった。

彼はほとんど聴こえないことをものともせず、
自分の可能性に全力でチャレンジしている。

それに比べて、私は何をしているんだろう?

私には聴こえる。
相手の嬉しそうな声も、私の名前を呼ぶ声も。

なのに私が人とまともに会話できないのは
「人見知りに逃げているだけ」じゃないか?

私を否定してこない本の世界に引きこもって、
人との心のふれあいを放棄してきたんじゃないか?

私は人見知りの克服のために
「もうどうやっても無理」というところまで
やり切ったんだろうか?

清凪(せな)くんみたいに、自分の人生に
全力でぶつかったことがあるだろうか?

いいえ…私はまだ、何ひとつ…。
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