ろくな死に方しねぇから
辿り着いた生徒玄関で、女子は頬を染めたまま余裕のなさそうな顔を浮かべ、何を言うでもなく徐に靴に履き替えた。律輝は大人しく女子の行動に倣う。今更逃げなどしないのに、手は一向に離してくれない。鋭く尖ったままの爪が、僅かだが律輝の制服に食い込んでいた。
女子はその後も律輝を連れて歩き続け、人の気配や視線が感じられなくなった場所でようやく足を止めた。薄暗く、閑散としている校舎裏だった。
「蓑島くん」
律輝を振り返った女子の声は、揺れていた。緊張しているのか。興奮しているのか。波打っているように聞こえた。牙も全く隠せていなかった。隠そうとする素振りもなかった。
呼吸の荒い女子は、意識して大きく息を吸って、吐いた。律輝は胸の高鳴りなど微塵も感じることなく、一人で緊張している女子を見下ろした。女子は開いたり閉じたりする唇をギュッと引き込み、覚悟を決めたようにパッと顔を上げた。今にも涙を流してしまうんじゃないかと思うほどに、その瞳は濡れていた。溢れ出す感情が、水滴となって表れていた。
「あの、私、み、蓑島くんのこと、が、その、す、すき、好きなの。蓑島くんの、か、身体に、流れる、け、血液を、のみ、飲みたいくらい、好きなの」
柔らかいとも冷たいとも言えない風が通り過ぎた。律輝は吃りながらもはっきりとした声で告白してきた女子を黙って見つめた。驚きはしなかった。喜びもしなかった。それでも、目の前の女子の偉大な勇気だけは胸に突き刺さるようだった。
女子が目指した校舎裏に到着するまでの道程で、複数の生徒とすれ違っていた。その度に大きく目を見開かれたが、誰も二人に話しかけてはこなかった。律輝は元より、女子も人に懐かれるタイプではないのだろう。教室の隅にいるような、進んで前には出ないような、控えめな人であることを察した。そうであるとするならば、律輝を捕まえ、律輝を連れ出し、律輝に告白するという女子の一連の行動は、もうこれ以上振り絞りきれないほどに振り絞った勇気によるもののように思えた。爪や歯の変化を誤魔化さなかったことも。自分の欲求を好意と並べて打ち明けたことも。
女子はその後も律輝を連れて歩き続け、人の気配や視線が感じられなくなった場所でようやく足を止めた。薄暗く、閑散としている校舎裏だった。
「蓑島くん」
律輝を振り返った女子の声は、揺れていた。緊張しているのか。興奮しているのか。波打っているように聞こえた。牙も全く隠せていなかった。隠そうとする素振りもなかった。
呼吸の荒い女子は、意識して大きく息を吸って、吐いた。律輝は胸の高鳴りなど微塵も感じることなく、一人で緊張している女子を見下ろした。女子は開いたり閉じたりする唇をギュッと引き込み、覚悟を決めたようにパッと顔を上げた。今にも涙を流してしまうんじゃないかと思うほどに、その瞳は濡れていた。溢れ出す感情が、水滴となって表れていた。
「あの、私、み、蓑島くんのこと、が、その、す、すき、好きなの。蓑島くんの、か、身体に、流れる、け、血液を、のみ、飲みたいくらい、好きなの」
柔らかいとも冷たいとも言えない風が通り過ぎた。律輝は吃りながらもはっきりとした声で告白してきた女子を黙って見つめた。驚きはしなかった。喜びもしなかった。それでも、目の前の女子の偉大な勇気だけは胸に突き刺さるようだった。
女子が目指した校舎裏に到着するまでの道程で、複数の生徒とすれ違っていた。その度に大きく目を見開かれたが、誰も二人に話しかけてはこなかった。律輝は元より、女子も人に懐かれるタイプではないのだろう。教室の隅にいるような、進んで前には出ないような、控えめな人であることを察した。そうであるとするならば、律輝を捕まえ、律輝を連れ出し、律輝に告白するという女子の一連の行動は、もうこれ以上振り絞りきれないほどに振り絞った勇気によるもののように思えた。爪や歯の変化を誤魔化さなかったことも。自分の欲求を好意と並べて打ち明けたことも。