ろくな死に方しねぇから
 告白されたとて、へらへらもにやにやもにこにこもしない平常心の律輝は、未だ律輝の腕を握り締め、言いたいことを言って唇を噛んだ女子と目を合わせた。返事を求められている。返す言葉は既に決まっている。考えるまでもない。律輝は普段と何ら変わりない調子で淡々と言った。

「俺は好きじゃないし、血液も飲ませられない。分かったら、手、離して」

 真っ向から冷たく突き放された女子は、その瞬間、ぽろりと涙を溢した。頬を伝う雫にハッとなった女子は、すぐに目元を拭いつつ下を向く。律輝の腕は解放された。制服を伝っていた熱が、ゆっくりと冷えていった。女子の尖った爪は、律輝の皮膚を傷つけてはいなかった。

「そ、そうだよね。こ、こんなところ、連れてきて、す、好き、とか、け、血液を、飲みたい、とか、あの、気持ち悪いこと、言って、ごめん」

 嗚咽しながらも一生懸命に喋る女子の震えた声が、空気を揺らして律輝の耳に届く。そしてまた、本当にごめん、と謝る女子は、涙を隠したまま背を向けふらふらと歩き出した。

 真剣だと伝わるくらい素直な好意も欲求も、決して気持ち悪いとは思っていないが、立ち去ろうとするのを呼び止めてまで口にすることではないと思い黙っておいた。そのような旨を伝えて中途半端にフォローするのは、傷口に塩を塗るだけだ。下手に傷つけるのも、下手に慰めるのも、気持ちに踏ん切りをつけようとしているのを邪魔する騒音にしかならないだろう。

 遠のく猫背気味の背中を意味もなく見つめた。女子がいなくなって少し経ってから、自分も校舎裏を後にしようと決めたところで、ふと女子が何かを思い出したかのように足を止めた。同時に、どんよりとして重たい、禍々しい不穏な気配を感じた。空気が一変する。立ち止まった女子によるものではない。もっと別の何かだ。律輝は身構えた。

 失恋したばかりで傷心している女子がその違和感に気づいている様子はなく、徐に律輝を振り返るなり未だ震えている唇を開いた。目元は赤らんでいた。
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