ろくな死に方しねぇから
律輝は間髪を容れずに次の攻撃の姿勢をとった。ナイフを握り直しつつ、片足を大きく振り上げる。今度は顔面を狙う。ナイフの行く末を追っていた依澄の黒目が動く。ほんの少し、見開かれた。依澄の手が防御に入った。律輝は構わず蹴り飛ばす。回し蹴りを食らわす。下手に抵抗はしない依澄。吹っ飛ばされるがまま、受け身をとって体勢を整えてみせた。
風を切り裂くような動作に僅かな砂埃が立つ中、二人は無言で睨み合う。殺気立っていた。依澄も打って変わって鋭い眼光を放っていた。もう後には引けない。殺るしかない。相手は自分の最大の敵だ。
律輝と依澄の認識が合致する。殺し屋として、ヴァンパイアとして、完全にスイッチが入る。互いの命を喰らうために地面を蹴ったのは、ほぼ同時だった。
縮まる距離。腰を落とした依澄の視線が律輝から外れる。律輝は見つめるその先を一瞥した。胸の辺りだ。突き刺さる殺意に鼓動が速まる。息を吸う。吐く。ナイフの感触を確かめる。依澄が腕を引く。鋭く頑丈な爪を宿した指がピンと伸びている。やけに響く呼吸音。狙われている胸部。すなわち、心臓。威力を溜めて迫る手が鼓動を貫く寸前、律輝は往なすように半身になって退けた。すかさずナイフで斬首を試みる。依澄の目がぎょろりと動き、視線が交わった。律輝は悟った。そう簡単に上手くはいかない。恐らく、避けられる。ザラザラとした音。地面に足を滑らせ更に腰を落とした依澄が、律輝の放った刃を躱した。隙ができた律輝の心臓を、再度取ろうとするような手の動き。鼓動が全身に伝わるような緊迫感。躱されたナイフを逆手に持ち直す。刹那、迫り来る魔の手。歯噛みする。出遅れた。依澄の方が一歩速い。間に合わない。反撃できない。見切りをつけ、律輝は致命傷を負う直前で飛ぶように後退した。依澄の爪の先が制服を掠った。判断を間違えていたら貫かれていた。
風を切り裂くような動作に僅かな砂埃が立つ中、二人は無言で睨み合う。殺気立っていた。依澄も打って変わって鋭い眼光を放っていた。もう後には引けない。殺るしかない。相手は自分の最大の敵だ。
律輝と依澄の認識が合致する。殺し屋として、ヴァンパイアとして、完全にスイッチが入る。互いの命を喰らうために地面を蹴ったのは、ほぼ同時だった。
縮まる距離。腰を落とした依澄の視線が律輝から外れる。律輝は見つめるその先を一瞥した。胸の辺りだ。突き刺さる殺意に鼓動が速まる。息を吸う。吐く。ナイフの感触を確かめる。依澄が腕を引く。鋭く頑丈な爪を宿した指がピンと伸びている。やけに響く呼吸音。狙われている胸部。すなわち、心臓。威力を溜めて迫る手が鼓動を貫く寸前、律輝は往なすように半身になって退けた。すかさずナイフで斬首を試みる。依澄の目がぎょろりと動き、視線が交わった。律輝は悟った。そう簡単に上手くはいかない。恐らく、避けられる。ザラザラとした音。地面に足を滑らせ更に腰を落とした依澄が、律輝の放った刃を躱した。隙ができた律輝の心臓を、再度取ろうとするような手の動き。鼓動が全身に伝わるような緊迫感。躱されたナイフを逆手に持ち直す。刹那、迫り来る魔の手。歯噛みする。出遅れた。依澄の方が一歩速い。間に合わない。反撃できない。見切りをつけ、律輝は致命傷を負う直前で飛ぶように後退した。依澄の爪の先が制服を掠った。判断を間違えていたら貫かれていた。