ろくな死に方しねぇから
 道連れ、と宣った依澄に、胸を貫く指を引き抜かれ、脇腹の肉を引きちぎられた。胸に穴が空く。脇腹の一部が欠ける。瞬く間に上半身が血に染まる。律輝の血液を浴びている依澄の両手が、律輝の血肉を握ったまま力尽きたように落ちる。頸動脈を切られた依澄の最期の抵抗であり攻撃であった。

 全てがスローモーションのように過ぎていく中、律輝の身体からも徐々に力が抜けていった。前に倒れ込む。依澄に覆い被さってしまいそうになる。律輝は左手を地面につき、気力だけで堪えた。意識が朦朧とする。出血が多すぎる。恐らくもう助からない。依澄と共にここで終わりだろうが、殺し屋である律輝にはまだやるべきことが残っていた。

 律輝は這うようにのろのろと移動し、いつの間にか放り出していたバッグを手繰り寄せた。スマホを引っ張り出す。緩慢な動作で指を滑らせる。画面に血が付着する。拭う余裕はない。辛うじて指を動かせる今のうちに報告しなければならない。律輝は頼りない指先で上司にメッセージを送る。昼に律輝が送信したものには、了解、とだけ返信が来ていた。

【殺しました】

 やっとの思いで送信するなり、律輝は全ての力を使い果たしたかのように横臥した。視線の先には、生が感じられなくなった依澄の姿。周りには血溜まりができている。移動した律輝の周りでも、血液は面積を広げ始めている。律輝が進んだ道を示す赤が、血と血を繋いでいる。それはまるで、二人を繋ぐ、決して切れない鎖のようだった。

 血で汚れたスマホが音を立てた。上司からだろうが、律輝は既に指一本も動かせなくなっていた。呼吸が浅い。意識も遠のいている。不思議と眠気も感じている。律輝は重くなる瞼に抗えずに目を閉じた。弱々しく息を吐く。吸う。吐く。そのまま。静かに。依澄の後を追うように。律輝の呼吸は停止した。



END
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