イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

4

月曜日になった。
いやでも、今日も蒼と顔を合わせることになる。
こうなったら、行き当たりばったりでやるしかない!
そう自分に言い聞かせて、職場に向かった。

……なのに。

「……鳴海くん、風邪?」

目の前の蒼の顔色が、いつもより少し青白い。
いつも元気で、笑顔が眩しい彼が、今日はどこかだるそうで、鼻声も少し入っている。

「だ、大丈夫です。真緒さんの顔も見たかったし……」

熱っぽい目で、そんなことを言う蒼。

「な、何言ってるの! ふらふらじゃない!」
私は思わず声を張り上げた。
「他の人にうつると大変だから、もう帰りなさい! 社会人なんだから、人に迷惑かけないの!」

蒼は「え……」としょんぼりした顔をしたけど、それでも反論しようと口を開く。
だが私は、その前にさっさと人事に年休を申請してやって、無理やりタクシーに押し込んだ。

「ほら、ちゃんと休む!」
そう言うと、蒼はタクシーの窓から弱々しく手を振った。

……そういうところは、まだ新人くんか…

やれやれ……と思いながら、デスクに腰を下ろす。
その瞬間、同僚が「これ」と私にスマホを差し出した。

「はい?」と首をかしげると、同僚は小声で笑う。
「多分、鳴海くんのスマホ。忘れてったみたいだよ」

「……え?」

「来栖さん、届けてくれる?仕事の一貫でいいから」
係長が呟く。

「わ、私がですか?」思わず声が裏返る。
「いいじゃん。鳴海も困ってると思うし」

同僚はにやにやしている。
社内の視線はまるで「恋人に届けに行く」みたいな扱い。
――みんなでからかうな……!

係長から住所を教えてもらい、「これ使っていいから」とタクシー代の足しまで渡された。
……完全に、既成事実を作られている気がする。

「……仕方ない。行くか」
ため息をつきながら、鳴海くんのスマホをバッグにしまいこむ。

タクシーを降りて目の前に現れたのは、思った以上に立派なマンションだった。
ガラス張りのエントランスに、しっかりしたオートロック。
エントランスには管理人らしき人までいて――

「……結構、高そう……」

私は場違いな気分で、バッグをぎゅっと握りしめた。
インターホンを押す指が、やけに緊張で震えている。
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