イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか？

「あ……真緒さん……」
薄目をあける蒼。

「体温は？」
「わかりません……」
「体温計は？」
「ありません……」
「飲み物は？」
「ありません……」
「食べ物は？」
「ありません……」
「冷やすものは？」
「ありません……」
「薬は？」
「ありません……」

「……なんにもないじゃん！！」

思わず声を荒げた。
社会人になってひとり暮らししてるくせに、この有様は何！？
呆れ半分、心配半分で蒼を見下ろすと――

「す、すみません……」
情けなさそうに眉を寄せて、なおも弱々しく笑う蒼。

「なべは？」
「ありません……」
「電子レンジは？」
「あ、あります……」

よし、と心の中でつぶやく。
「わかった。またチャイムが鳴ったら、鍵開けてね」

そう言って、私はマンションを出た。
とにかく、蒼のために必要なものをそろえなきゃ――。

バッグの中のスマホで近くのドラッグストアとスーパーを確認する。

「……よし、急げ！」
胸の中で小さく決意して、私は歩き出した。

私は両手いっぱいの荷物を抱えて、蒼の部屋に入った。

「……具合は？」
視線の先には、さっきと同じ場所で、同じ格好で座り込んでいる蒼。
「具合悪いんじゃん……」

さっそく買ってきた体温計で体温を測る。
「38.9℃……うーん、高い」
高熱に頬を赤らめる蒼を見て、自然と肩の力が入る。

次に、買ってきた飲み物を口元に運ぶ。
「はい、これで少し楽になるはず」
ふらふらしながらも、飲み干す蒼。

「……さ、ベッドに行こう」
無理やり立たせて、支えながらベッドまで連れていく。

ベッドルームは、想像以上にシンプルで整えられていた。
よかった、布団はある……。
ふかふかの布団に蒼を座らせ、私は荷物を整理しながら心の中で安堵する。

「暑い？　寒い？」
「……暑いです」
頬を赤くした蒼が、小さな声で答える。

「じゃあ、きっと今が熱のピークね」
そう言って、私は熱冷ましのシートをおでこに貼った。
ひんやりとした感触に、蒼がちょっとだけ目を細める。

「……あとは、水分と栄養かな」
私はさっそくキッチンに立った。

しかし、驚くほど何もない冷蔵庫。
まな板と包丁はあって、ひとまず安心。
でも、冷蔵庫を覗き込むと、中はほぼ空っぽ。

「……いったいいつも何を食べてるのよ」
つぶやく私に、蒼は弱々しく笑った。
「……ラーメンとか、カップ麺とか……」

心の中でため息が出る。
教科書に載ってるような、男の子一人暮らし！