イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

【side職場】

現場の空気は、いつも男ばかりの無骨なものだった。
女性といえば、来栖真緒ただ一人。
それだけでも珍しいのに、彼女は不思議とここに溶け込んでいて、誰もが一目置いていた。

――ただ、彼女と組むのは楽じゃない。
仕事に関しては厳しいし、遠慮なんてしない。

そんな中で入ってきた新人、鳴海蒼。
最初は大丈夫かとみんな内心思っていた。
けれど――。

「……なんか、あいつ、ずっと目で追ってねぇか?」
「お前も思った?なぁ、絶対そうだよな」

彼らは気付いていた。
鳴海の視線の先に、必ず真緒がいることを。
そして、彼女が思わず笑った瞬間の、蒼の分かりやすい照れ顔に。

「はは、青春だなぁ」
「羨ましいわ、俺なんか嫁に毎日怒鳴られてんのに」
「……いや、お前は自業自得だろ」

そんなやりとりを交わしながらも、彼らの目はあたたかい。
普段は仕事に追われ、余計なことには関心を示さない彼らも、この恋模様だけは気になって仕方がないのだ。

昼休みの休憩室。
コーヒーを片手に、係長がにやにや笑いながら言った。
「おいおい、どうなると思う? あの二人」

「そりゃあ……決まってるだろ」
「だな。もう見守るしかねぇ」

結局、職場の男たちは皆、ニヤニヤしながら二人の行方を静かに見守ることにした。
口には出さなくても、どこか息子や弟を見ているような感覚で。
仕事の場に、ちょっとした彩りを運んできたふたりに、心の中でエールを送りながら――。
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