イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

5

「このたびはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

次の日、蒼はきっちりと背筋を伸ばし、職場全体に丁寧な謝罪をした。
真面目すぎるくらいのその姿に、周囲はかえって苦笑する。

「いやいや、いいっていいって。誰でも体調崩すことあるんだから」
「そうそう。若手は無理しがちだからな」

と、係長をはじめ、先輩たちも口々にフォローする。

(よかった。元気になって……)
真緒はほっと胸を撫で下ろした。

昼休み。食堂へ向かおうとした真緒の背後から、声がかかった。

「真緒さん、ちょっといいですか」

振り向くと、蒼が立っていた。
どこかかしこまった雰囲気で、背筋を伸ばしている。

「……なに?」
思わず声が硬くなる。どきん、と胸の鼓動が速まるのを自覚してしまう。

蒼は周囲を一瞬見渡し、誰も近くにいないことを確認してから、真緒の前に一歩出た。
真剣な目――この前、弱々しく熱に浮かされた表情を見たばかりだからこそ、その違いにまた胸がざわめく。

「……あの、本当にありがとうございました」
深く頭を下げる蒼。

「体調が悪いときに、あそこまでしてもらえるなんて、思っていませんでした」

私はあわてて手を振る。

「仕事中に行かせてもらってるし気にしないで」

「じゃあ、仕事でたくさん恩返ししますね」

にこっと笑う蒼。
私はその顔に、心をギュッと捕まれた。

「うん、よろしくね」

私はぎこちなく笑った。
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