イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
「……もう一回してください」
蒼が上目遣いで、頬を赤く染めながらとろけた顔で呟いた。

私は返事をしなかった。
ただ、彼の言葉に導かれるように身をかがめ、もう一度、唇を重ねた。
今度は少し長く。そっと触れるだけなのに、体中の神経が敏感になっていく。

離れると、蒼の表情はまるで夢心地。
とろけそうな笑顔。
――こんな表情、普段の職場では絶対に見せないのに。

「……真緒さん、好き」
その言葉が、真っ直ぐに私の胸を射抜いた。
心臓がばくんと跳ねて、頭が真っ白になる。

「……鳴海くんずるいよ……」

蒼は慌てる様子もなく、柔らかく微笑んだ。
「俺がお願いしたことですもんね」
その声音は、どこまでも優しくて、私の逃げ道をすべて塞いだ。

次の瞬間、彼の腕が私の腰を掴み、ぐっと引き寄せられた。
蒼は座ったままなのに、強い力で私を抱きしめる。

「もう、離したくない」
小さな声で、しかしはっきりとそう囁く蒼。

「好きって言ってください」

懇願にも似た甘い囁き。


「……好き…」

その言葉を聞いて、蒼が粗っぽくキスをした。
椅子がわずかにきしむ音と、私の荒い呼吸だけが、静かなオフィスに残る。
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