イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

6

次の日の朝から、私は昨日のミスに関する雑務に追われていた。
報告書、修正データ、確認作業――やることは山積みで、机の上も心の中もごちゃごちゃのまま。
手を動かしながらも、頭の片隅にはどうしても昨日のことが浮かんでしまう。

……何してたんだ、私たちは。
あれから、しばらく抱き締めあって、私たちはタクシーでそれぞれの家に帰った。

……これって付き合うってことなのかな……
恋愛が久しぶりすぎて、はじまりのタイミングが分からない。

「真緒さん!」

突然、元気いっぱいの声が背後から飛んできて、私はびくっと肩を跳ねさせた。
振り返ると、そこには昨日と同じく、いや、それ以上に明るい笑顔の蒼が立っていた。
いつもよりずっと軽やかな足取り、きらきらした目。

「お、おはよう…」
なんとか返したけれど、声が上ずってしまう。

今日の蒼はまるで子犬みたいに目を輝かせている。
キラキラしたその瞳が、嬉しさを隠しきれないって言っているみたいで――いや、隠す気なんて最初からないのかもしれない。

かわいい…

思わず、そう呟きそうになった。
危ない、危ない。ここ職場!と自分にブレーキをかける。

「今日、一緒に帰りましょうね」
蒼が何気ない調子でそう言った。

その一言に、胸がぎゅっと締めつけられる。
「う、うん……」
気づけば、私は頷いていた。

「じゃあ、終業後にエントランスで待ってますね。約束ですよ」
蒼は嬉しそうに笑って、席に戻っていった。

私は書類をまとめながら、誰にも気づかれないように深呼吸をする。
落ち着け、落ち着け。

机の上の書類が霞んで見えるほど、頭の中は「約束」でいっぱいだった。
……久しぶりの恋愛は、激甘の予感だった。
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