イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
夕食の食卓には、大皿に唐揚げや煮物、義姉お手製のポテトサラダ、山盛りのご飯。
子どもたちがわいわいと箸を伸ばし、兄は「おい、順番!」と注意しながらも自分も一番に肉を取っていた。

蒼は、そんな賑やかな光景に目を丸くしていた。
「……すごい、みんなで食べると、こんなににぎやかなんですね」
思わず呟く彼に、亜佑美が笑いかける。
「えー?普通だよ普通。ねえ?」
「うん、普通だよ」
私はくすっと笑った。蒼はかなり嬉しそうだ。

「蒼さん、唐揚げどうぞ!」
姪っ子が唐揚げを取り分けてくれ、蒼は慌てて両手でお皿を受け取る。
「ありがとう。いただきます」
その真剣さに、今度は甥っ子がケラケラ笑う。
「なんか、めっちゃ真面目!」

「真緒ちゃん、彼氏さんかわいいじゃん!」
子どもたちの率直すぎる言葉に、私は思わず赤面する。
蒼はさらに真っ赤になり、けれど恥ずかしそうに笑っていた。

「……こういうの、初めてなんです」
ぽつりと蒼がこぼした。
「一人っ子で、家族でご飯食べることはあったけど……こんな大勢で、わいわい食べるのは初めてで。すごく楽しいです」

その言葉に、兄がちらりと蒼を見た。
相変わらず表情は固いけれど、口元がほんの少しだけ緩んでいるのを私は見逃さなかった。
「……まあ、騒がしいだけだぞ」
不器用な兄なりの肯定。私は心の中でほっとした。

義姉が笑顔でおかわりを勧め、子どもたちは次々と質問をぶつけ、兄は無言で酒を飲む。
その賑やかさの中で、蒼は終始嬉しそうにしていて。
私の家族のなかに、蒼がいるのっていいなと心から感じていた。
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