イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
お土産までもらって、私たちは兄の家を出た。外はもう暗くなっていた。
手を繋いで歩く。
どうなるかと思ったけれど、兄は蒼が気に入ったみたいだ。

「……なんか、夢みたいだったな」
隣で蒼がしみじみと呟いた。

「夢?」
私が顔を向けると、彼は少し照れながら笑った。

「うん。ご飯が並んで、みんなで取り合うみたいに食べて、笑って……ああいうの、ドラマの中だけだと思ってた」
「そんな大げさな」
思わず笑ったけれど、蒼の横顔は真剣で。

「子どもたちが自然に話しかけてくれて……亜佑美さんも優しくしてくれて……そして、真緒のお兄さんも、なんだかんだで受け入れてくれて」
そこで彼は一度言葉を切って、ぎゅっと私の手を強く握った。

「本当に嬉しかった。俺……ああやって大勢で囲む食卓がすごく新鮮で」

彼の声が夜風に溶けて、私は思わず笑みをこぼし、彼の手を握り返した。

「……よかった。私もちょっと心配してたけど、蒼が楽しそうにしてくれて、安心した」
「また行きたいな」
「うん、きっと喜ぶよ」

そう言って顔を見合わせると、蒼はとろけるような笑顔になった。

「……真緒」
「なに?」
「俺、やっぱり真緒と出会えてよかった。今日、すごくそう思ったよ」

そんなまっすぐな言葉を、迷いなく言えてしまう彼に。
私はまた、どうしようもなく恋をしてしまう。

「今日、俺のうち泊まって」
蒼が歩きながら、不意に口にした。

私は彼の横顔を見つめる。彼はわざと視線を逸らして、けれど耳までほんのり赤くなっている。

胸がどきどきして、うまく声にできない。
けれど、私は小さく頷いた。

その瞬間、蒼の表情がぱあっと明るくなり、子どものように嬉しそうに笑う。
「ほんとに?……やった」
無邪気なくらい素直な反応に、思わず頬が緩んでしまう。

「でも、なにも用意もしてないし……」
「大丈夫。俺、真緒がいてくれれば、なにもいらないから」
彼はそんな甘すぎる言葉を平気で口にする。私の心臓は一気に跳ね上がって、どうしようもなく照れくさい。

手を繋いで歩く足取りは、自然と速くなる。
一緒に帰れるだけで幸せだったのに、今夜はもっと近くにいられる。
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