イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
12
話はとんとん拍子に進んで、私は蒼の両親に挨拶することになった。予定は2週間後。
日にちが決まっただけで、心臓の鼓動は一気に速くなる。彼の両親に会うなんて人生で初めてのことだし、何より「年上」という事実が私の中で小さな棘みたいに残っていた。
「大丈夫だよ。うちも母親が父より年上だから。全然気にしないって」
蒼は本当に、まるで気にする様子もなく、にこにこしながら言ってくれる。
その笑顔に救われるけれど、それでもやっぱり私は、当日まで落ち着かない気がしていた。
そんなある日の午後だった。
忙しい仕事の合間、デスクの電話が鳴った。
「来栖さんにお電話です」
内線をつないだ同僚の声に小さく頷き、受話器を取る。
「はい、来栖です」
しかし、相手はすぐには名乗らなかった。
数秒の沈黙のあと、少し低めの声で言う。
「……鳴海と、どういう関係ですか」
一瞬、背筋に冷たいものが走る。
鳴海…?蒼のことだよね?
「どちら様でしょうか」
努めて冷静に問い返す。
「名乗る必要はありません。ただ、彼のために言っておきます。あなたのような年上の女性が彼に近づくのは、どうかと思います」
……何…?
受話器を握る手に汗がにじむ。
「……失礼ですが、あなたは一体――」
そう言いかけたとき、プツン、と一方的に電話は切られた。
呆然と受話器を見つめる。
どう考えても、蒼の関係者……。
しかも、私たちが付き合っていることを知っている相手。
社外の電話、外線からだったから、会社の人ではないはず。
あの声……はっきりとは言えないけれど、女性。しかも若い。
ただの勘じゃない。耳に残る柔らかさや、少し尖った響き……。同年代やそれ以上じゃなく、もっと若い世代の声。
「あなたのような年上の女性が彼に近づくのは、どうかと思います」
あの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
どうかと思いますって……何様なの?と思う気持ちと同時に、胸の奥がチクリと痛んだ。
年齢のことは、私自身が一番気にしている部分だから。
そこを真正面から突かれると、心の弱いところを見透かされたみたいで、立っているのも辛くなる。
受話器を置いた手のひらには、まだ冷たい汗が張り付いていた。
――蒼に、相談した方がいいのかな。
一瞬、頭に浮かぶ。
でも、言ったら彼を困らせるかもしれない。
蒼は、今忙しいし、異動したばかりで大変そうだ。そんな中で、私の不安をぶつけてもいいのか。
けれど、黙っていると……この不安は私の中でどんどん大きくなる。
日にちが決まっただけで、心臓の鼓動は一気に速くなる。彼の両親に会うなんて人生で初めてのことだし、何より「年上」という事実が私の中で小さな棘みたいに残っていた。
「大丈夫だよ。うちも母親が父より年上だから。全然気にしないって」
蒼は本当に、まるで気にする様子もなく、にこにこしながら言ってくれる。
その笑顔に救われるけれど、それでもやっぱり私は、当日まで落ち着かない気がしていた。
そんなある日の午後だった。
忙しい仕事の合間、デスクの電話が鳴った。
「来栖さんにお電話です」
内線をつないだ同僚の声に小さく頷き、受話器を取る。
「はい、来栖です」
しかし、相手はすぐには名乗らなかった。
数秒の沈黙のあと、少し低めの声で言う。
「……鳴海と、どういう関係ですか」
一瞬、背筋に冷たいものが走る。
鳴海…?蒼のことだよね?
「どちら様でしょうか」
努めて冷静に問い返す。
「名乗る必要はありません。ただ、彼のために言っておきます。あなたのような年上の女性が彼に近づくのは、どうかと思います」
……何…?
受話器を握る手に汗がにじむ。
「……失礼ですが、あなたは一体――」
そう言いかけたとき、プツン、と一方的に電話は切られた。
呆然と受話器を見つめる。
どう考えても、蒼の関係者……。
しかも、私たちが付き合っていることを知っている相手。
社外の電話、外線からだったから、会社の人ではないはず。
あの声……はっきりとは言えないけれど、女性。しかも若い。
ただの勘じゃない。耳に残る柔らかさや、少し尖った響き……。同年代やそれ以上じゃなく、もっと若い世代の声。
「あなたのような年上の女性が彼に近づくのは、どうかと思います」
あの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
どうかと思いますって……何様なの?と思う気持ちと同時に、胸の奥がチクリと痛んだ。
年齢のことは、私自身が一番気にしている部分だから。
そこを真正面から突かれると、心の弱いところを見透かされたみたいで、立っているのも辛くなる。
受話器を置いた手のひらには、まだ冷たい汗が張り付いていた。
――蒼に、相談した方がいいのかな。
一瞬、頭に浮かぶ。
でも、言ったら彼を困らせるかもしれない。
蒼は、今忙しいし、異動したばかりで大変そうだ。そんな中で、私の不安をぶつけてもいいのか。
けれど、黙っていると……この不安は私の中でどんどん大きくなる。