イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
蒼は腕を組んで、険しい顔のままソファに腰を下ろした。
ぶつぶつと独り言のように呟き始める。

「真緒の話をしている人……
真緒の家族は考えにくい。そんなこと、言う人じゃないでしょ。
会社の人も、わざわざ外線からかけるなんて、あり得ない。
友達……?でも、まだあんまり話してないし……
うちの親……?いや、まさか。だって、ほとんど伝えてないのに……」

普段なら明るくて、どこか抜けているような彼が、こんなに真剣に考え込んでいる。

「……蒼」
思わず名前を呼んでいた。
「そんなに思いつめなくてもいいよ。たぶん、ただの悪戯かもしれないし」
そう言って笑おうとしたけれど、声が震えていた。

「悪戯でも、真緒を不安にさせるなら、対処しておかないとね」

まっすぐな瞳に射抜かれるようで、視線を逸らせなかった。

「とにかく、不安なことがあったら、必ず俺に言って」
彼の言葉はいつになく強くて、それでいて優しかった。

「……ありがとう」
小さく頷くと、彼はようやく少し表情を緩めて、ふっと笑った。

「うん。いつもの真緒の顔」
その笑顔に、緊張が少し解ける。
でも、同時に分かった。
蒼は、本気で相手を突き止める気でいる。

――大丈夫。きっと蒼がいるから。

そう思いながらも、胸の奥に小さな不安の種は残っていた。
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