イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
ある日の午後。
外線が鳴り、私は何気なく受話器を取った。

「来栖…さんですか?」
落ち着いた、しかし妙に冷ややかな女性の声。
あの時の電話の声…!
私はすぐに気がついた。

「……はい。どちら様でしょうか」

「里中といいます。今日、少し時間いただけませんか」

一瞬、心臓が跳ねた。
私は、彼女の話を聞くことにした。

仕事終わり、指定されたカフェに行くと、そこにいたのはきちんとしたスーツ姿の女性がいた。
整った顔立ちに、自信がにじんでいる。

「来てくれてありがとうございます。……あなたと直接話してみたくて」
彼女は真っ直ぐに私を見つめた。

「鳴海くん、変わりましたね。あなたのおかげで」
その声音は一見、褒めているようでいて、皮肉が滲んでいた。

「……彼自身が変わったんです。私は、そばにいただけで……」
できる限り穏やかに返す。

すると里中は目を細め、低く笑った。
「そうですよね。
鳴海くんは昔から不器用で、でも、ひとつに真剣な人だった。
それが、今はたまたまあなたなだけですよね」

胸の奥がざわつく。
挑発だと分かっていても、心を揺さぶられた。

「……だったら、何なんですか?あなたには関係ないでしょ」
思わず強い声で返すと、は涼しい顔で続けた。

「私はまた、鳴海くんのそばにいたいの。
あの人は、半端な気持ちでそばにいられるほど軽い存在じゃない」

私はコーヒーを一口飲み、深呼吸をした。
――逃げたらダメだ。

「……分かっています。彼がどんなに不器用かも。
でも、それでも今、彼のそばにいて、支えているのは私です。これからもずっと。あなたは関係ないです」

静かに、でも強く言い切った。

里中の表情に、ほんの一瞬だけ揺らぎが走る。

「彼なら、またすぐに、もとに戻るわ」

その言葉はまるで宣戦布告のようだった。
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