イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
蒼と里中が会っている時間、私は、蒼の家で待っていた。

部屋のソファに座り込む。テレビをつけても、頭には何も入ってこない。料理をしようかと思っても、包丁を持つ手が震えてしまいそうで、結局台所には立てなかった。

胸の奥がざわざわして、落ち着かない。
「大丈夫、大丈夫……」
声に出してみるけれど、不安は完全には消えない。

蒼が危険な目にあうわけではない。
理屈ではわかっている。

でも――彼が心を乱されるのではないか、私の存在が試されるのではないか、そんなことを考えると、胸がきゅっと締めつけられた。

「蒼なら、大丈夫」
彼が私に見せてくれる真っ直ぐな瞳。
「真緒が好きだ」って、何度も何度も繰り返してくれた声。
それを裏切る人じゃない。

信じたい。
いや、信じる。

蒼はまっすぐで、誠実で――そして何より、私を選んでくれた。

不安に負けちゃいけない。
私は、強くありたい。
今度は私が信じ続ける番だ。

時計を見るたびに、針が遅く進んでいるように感じる。
私は窓際に移動し、外の夜空を見上げた。

星は少ししか見えなかったけれど、それでも、どこかで蒼も同じ空を見ている気がした。

信じ続ける。
心のなかで何度も呟いた。

そして、私はキッチンに向かった。
ご飯を作ろう。
そして、いつものように、出迎えよう。
それが、今、私にできるただひとつのことだ。
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