イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか？

蒼は、真っすぐマンションへと帰った。
扉を開けると、ふわりと優しい香りが迎えてくれる。キッチンには温め直した夕飯が並び、テーブルの上には二人分の湯呑みが置かれていた。

「おかえり、蒼」
真緒の声。いつもより少し不安げで、それでも笑顔を作ろうとしている。

蒼はその姿を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
気づけば、何も言わずに彼女を抱きしめていた。

「……もう大丈夫。里中は退職するし、二度と真緒に近づけさせない。はっきり言った。俺が絶対に守るって」

真緒の肩が小さく震えた。安心と安堵が混ざった涙が、蒼の胸元にしみていく。

「……ありがと」
「俺がこらからも、守るから」

蒼は照れ隠しのようにそう言って、彼女の唇にキスを落とした。
何度も、何度も。

「ちょ、蒼……ご飯冷めちゃうよ？」
「いいよ。今日はこうしていたい」
「もう……そういうこと言うんだから」

真緒は苦笑しながらも、しっかり蒼の腕に抱きつき返す。
二人の間に漂う空気は、ただ甘くて、柔らかい。

蒼は、真緒を抱きしめたまま離さない。

「ねえ……ご飯、本当に冷めちゃうよ？」
「うん……でも、今はこのまま」
「そんな顔して言われたら……」

真緒は照れ笑いを浮かべながらも、結局自分からも蒼の背中に腕を回す。
ぴたりと重なる体温。聞こえる鼓動が、互いの気持ちを確かめるように響きあっていた。

「……夢みたいだな。俺が真緒とこうしてるなんて」
「夢じゃないよ」
「そうだな……じゃあ、もっと確かめさせて」

蒼はまた、照れたように笑いながら真緒の髪を撫でた。

「甘えん坊だね」
「……俺をこうさせるの、真緒だけだから」
「ずるい……」

そのまま、夜は深くなっていく。
照れながらも素直に「好き」と繰り返し、何度も何度も抱きしめて、まるで一晩中夢を見ているようだった。

──そして翌朝。
カーテンの隙間から射し込む柔らかな光で目を覚ました。
隣には、すっかり無防備な寝顔を見せる蒼。
大きな体を小さく丸めるようにして、まるで子犬みたいに私の腕にしがみついていた。

「……かわいい」
思わず声に出すと、蒼がむにゃむにゃと目を開けた。

「おはよ、真緒……」
「おはよう。ぐっすり寝てたね」
「うん。真緒がそばにいるから、安心した」
「ふふ……」

寝起きなのに、蒼はまたそっと私を抱き寄せる。

「ねえ、真緒」
「ん？」
「今日も、明日も、その先も……ずっとこうしていたい」
「……私もだよ」