イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

15

数日後――。
私と蒼は、私の直属の係長に結婚の報告をすることにした。
蒼が営業部に行く前は、蒼の上司でもあった係長だ。
仕事終わり、区切りがついたタイミングで、二人で係長のデスクに向かう。

「係長、少しお時間いいですか?」
私が声をかけると、係長はいつものおだやかな笑顔で「どうした?」と首を傾げた。

蒼が隣で一歩前に出る。
「実は……僕たち、結婚することになりました」

係長の手が一瞬止まる。
けれど次の瞬間、何気ない顔で「そうか」と頷いた。

「やっぱりな。お前ら、そうなると思ってた」

係長はくすっと笑って、書類を片付ける手を止めた。
「二人とも、互いに視線で探し合ってるのがバレバレだったぞ」

「えっ……!」
私は思わず赤面した。

「とくに、鳴海は最初から、来栖を見るとき、目がハートだったからな。わかりやすかったぞ」

係長がにやりと笑いながらそう言った。

「えー?!ほんとですか!?」
思わず大きな声をあげてしまった私に、係長は肩をすくめる。
「バレバレだったな。仕事中でも、お前が資料を持ってくるたびに鳴海は目で追ってたし、会議のときだってお前の発言にだけ頷く回数が多かった」

「そ、そんなに……」
私は顔が熱くなっていくのを感じた。
横を見ると、案の定、蒼は耳まで真っ赤にしている。

「か、係長!それは、ちょっと……言わないって約束でしょーー!」

蒼が珍しく慌てた声を出す。

「いやいや、隠すな隠すな。みんなわかってたさ。ただ、来栖が気づかないふりをしてたから、俺たちも空気読んで見守ってただけだ」

「……やっぱり、そうなんですね」

バレていたのは恥ずかしいけれど、それだけ蒼の想いが最初から真っすぐだったんだと分かった。

「それにしても」
係長はニヤニヤしながら机に肘をつく。

「よくここまで漕ぎつけたな。お前の初恋が報われたな」

蒼は俯いたまま、ちらっと私を見る。
その目は恥ずかしさと、でも隠しきれない嬉しさでいっぱいだった。

「はい……」
蒼は思わず小声で呟いた。

「お前たち、幸せになれよ」

係長からの心からの祝福。
こんなに近くに、温かくて見守ってくれる人がいてくれてよかった。

「もちろん、俺は結婚式に呼ばれるんだよな?」
係長がにやりと笑って言った。

「もちろんです!!」
蒼は即答。食い気味に答えるその勢いに、私は思わず「ちょっと!」と蒼の腕を引いた。

「おいおい来栖、真っ赤じゃないか」
係長が大笑いする。
「そ、そんな……まだ、具体的に何も考えてなくて……」
私は口ごもりながら必死に言い訳を探した。

だけど、心の中では――。
(タキシードの蒼……きっとかっこいいんだろうなぁ……)
そんな妄想が膨らんでしまい、余計に顔が熱くなる。

「新婚オーラで会社を包むのはいいけど、ほどほどにな。俺まで砂糖まみれになっちまう」

茶化す声に、私と蒼は顔を見合わせて、同時に笑った。
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