Edge Of A Broken Heart 〜最悪続きのあとに〜
 給料も安い。
 音大に入って出るまでには、かなりのお金がかかるのに、音大卒の多くは、音楽関係の仕事に加え、音楽とは何の関係もないバイトもしないと食べていけない。
 バイトをしなくてもいいだけマシなのかもしれないが、実にパッとしない暮らしだ。
 別れた尾上も、浮気相手の涼子も、学生会館が同じだっただけで、違う大学だったから、今後、同窓会などで顔を合わせる訳でもないのは不幸中の幸いか。

 ひとり暮らしの安アパートから窓の外を眺めると、気が滅入るような雨。

 あ⋯⋯。
 ふと、あの警察沙汰の帰り、真田から傘を借りたことを思い出した。
 しかし、真田が何処に住んでいるか知らないので、これを返しに行くとなれば、再度、署に向かわなければいけない。
 それだけは嫌だ。
 もし、本当に必要なら取りに来るだろうし、借りパクしようか。
 いやいや⋯⋯サツ相手に借りパクはまずいだろう。
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