偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
一瞬、時間が止まったように思えた。

“美緒と結婚するつもり”。

それは“フリ”のセリフだとわかっているのに、心臓がとんでもない速度で脈打っている。

演技だって、わかってる。わかってるのに――嬉しかった。

「でもさ、一つ気になることがあるんだよな。」

高志さんが腕を組み、じっと私たちを見つめてきた。

その一言で、空気がわずかに張り詰める。

「さっきから、二人とも視線が合わなくない?」

――しまった。

私は反射的に俯いた。

そうだ、恋人なら自然に見つめ合うはず。

今まで何度も、街中でそういうカップルを見てきたのに。

「付き合ってどれくらい?」

高志さんの問いに、霧島社長はすかさず答えた。

「……三か月くらいだよ」

「そっか。じゃあ、まだちょっとよそよそしいのかな。」

そう言いながら、高志さんはにやっと笑った。
< 11 / 34 >

この作品をシェア

pagetop