偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
そう問いかけると、彼はすっと優しく微笑んだ。

「今日のドレス、似合ってるよ。」

「っ……あ、ありがとうございます!」

思わず頬が熱くなるのを感じた。

きゃあ、今……誉められた。

霧島社長に。しかも、いつもは冷静で仕事一筋のあの社長に――。

けれど、本音を言えば、私だって同じだった。

目の前にいる霧島社長は、黒のタキシードに身を包み、完璧な立ち居振る舞いを見せている。

スーツ姿も素敵だけど、今夜はまるで――王子様みたい。

「どうした?」

「いえ……」

否定しながらも、視線がつい彼の輪郭をなぞる。

すると、ふっと彼の唇が弧を描いた。

「見惚れたのか?」

ドキッとした。

ズルい。そんなふうに、さらりと心の奥を言い当てるなんて――。

「はい」とも「いいえ」とも言えず、私はただ、困ったように視線をそらした。
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